2025年10月9日【税務会計・管理会計・資金繰り】の適切な区分け
10月は(意図的にではありますが)かなり早いペースで、8月決算法人の手続きが進んでいる状況です。
9月はかなり切迫した月でしたので笑、この10月は余裕をもって過ごしていきたいものです。
さて、本日の本題です。
期首に立てる「年間予算」
弊所においては、法人の期首のタイミングで役員報酬の額を決定すべく、年間の予算を一緒に検討していくということが少なからずあります。
その際には、売上や経費の見込みを予測して年間の損益を見通し、それに見合う役員報酬を設定していくという流れです。
そして、3ヶ月に一度の面談の際には、その進捗状況を確認して、売上や経費の増減がなぜ生じたのかを、場合によっては確認していくことになります。
税務会計と管理会計のズレ
この予算について大切なのは、あくまで税理士の視点として、税務会計を基に役員報酬の試算をもとに作成しているものであり、
一方で、自社で内部的に管理会計として損益を把握している場合には、その数字とこの税務会計の損益が異なってくるケースがあるということなんですね。
実際に「予算を立てた状況と現状がそこまで乖離をしていないのに、数字が違っている」ということが起こるのは、まさにこのズレが原因です。
ズレが生じる理由:入金ベースと発生ベースの違い
その主な理由のひとつとして、予算組み(税務会計ベース)と、社内での管理会計における損益の認識タイミングが異なることが挙げられます。
どういったことかといえば、売上や経費について、どちらかでは「入金ベース」で集計している一方で、
もう一方では「発生ベース」つまり請求や納品のタイミングで認識していることがあるということなんですね。
こうした認識のズレは、結果として損益に大きな歪みを生みますので、早期の段階で潰しておきたいポイントです。
税務上の原則:「実現主義」と「発生主義」
売上については「実現主義」といって、商品やサービスの納品・提供が完了した時点で売上を計上するのが原則。
(その他にも論点はあるのですが、ざっくりとはそんなところ。)
経費は「発生主義」といって、同じく納品やサービス提供を受けた時点で経費を認識します。
これが税務上のルールですので、できる限り内部の管理でもこの基準に合わせて損益を把握していくのが理想です。
資金繰り管理は損益とは切り離して考える
ただ、難しいのが資金繰りの管理です。
資金繰りは売掛金や買掛金、減価償却費、借入金の入出金など、損益とは異なる概念が多く含まれます。
そのため、損益と資金繰りの管理を混同してしまうと、管理自体が崩壊してしまう危険があるんですね。
したがって、社内で資金繰りの管理を行う場合は、損益の状況とは別に「現金の入出金管理シート」を作成し、
それぞれを別々に運用することが望ましいと言えます。
損益と資金繰りを分けた管理が精度を高める
特に損益の予測は、最終的な納税額に大きな影響を与える要素です。
内部的な管理会計と税務会計上の損益とのズレを逐一把握し、
納税額や経営の見通しについて齟齬が生じないように、経営者として徹底的な精査に努めていきたいものですね。
==================
《本日の微粒子企業の心構え》
・税務会計上の損益と、社内の管理会計上の損益は異なっている状況にあることがある。
・その主な原因は、入金ベースか発生ベースかという収益と経費の認識タイミングの違いにある。
・経営の血液である現金を把握するため、資金繰りの管理は不可欠であるが、損益とは別の視点で考える必要があるため、損益と資金繰りは別々のシートで管理し、経営判断に資するための精度の高い資料を作成することを心がけたいものである。
---------------
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。