2021年10月31日役員報酬を期中で変えるのは本当にNG?
■「え?耐用年数って変えられるんですか?」
法人の決算対策において、
金融機関の融資を念頭に、
いろいろな調整を加えることが
少なからずあります。
その中で注目すべきは、
【税務上のルールと会計上のルールは違う】
ということ。
今日はそんなことから
お話を続けていくことにいたします。
■上述したように、
『税金を計算する上での利益』と
『会計上で計算する利益』とは、
少なからず相違があるもの。
税金を計算する上では、
法人としては
【法人税法】や【消費税法】
という法律の規定に基づいて
その処理をしていくのですが、
【会計のルールはまた別である】
という状況です。
税理士は当然『税務』の専門家ですので、
基本的には上述した
【消費税法】や【法人税法】という法律
に基づいて処理をするのが一般的です。
当然、対『税務署』に対する申告としては
それが通常なのですが、
金融機関に対する『融資』
を検討するにあたっては、
あえてこの税務上のルールから少し逸れて、
税金を計算する上で
【不利な申告】
をすることもあるんですね。
■具体的に言えば、
上述した言葉の中にある、
【耐用年数】
について。
例えば車に関しては、
税金を計算する上で
【普通自動車は耐用年数が6年であり、
軽自動車は4年である】
と規定されているのですが、
https://www.keisan.nta.go.jp/h29yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensuhyo.html
これは税金を計算する上でのルールであり、
会計上はと言えば、
【やはりその企業の実態に応じた
耐用年数で償却していくべきである】
と言えるでしょう。
何らかの事情により
普通自動車の耐用年数が6年であっても、
『実際は10年ほど使用する』
という想定がされるのであれば、
【耐用年数を10年にする】
ということも場合によっては考えられます。
■また、
『役員報酬』については基本的に、
【その期首から3ヶ月以内に決定して、
その後は毎月定額でなければならない】
という税務上のルールがあるのですが、
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5211.htm
【これは会計上のルールではない】
ということ。
例えば、
『期首から半年の間は
報酬を50万円で支払っており、
その後資金繰りが苦しくなったため
これを30万円に減額した』
としましょう。
そうなると、
税金を計算する上で経費(損金と言います)
として認められるのは、
【変更後の30万円のみ】
なんですね。
そうなると、
【50万円と30万円の差額である
『20万円』で、当初の最初半年の間に
支給したものは経費とはならない】
(税金を計算する上で
『損金不算入』と言います)
ということになるわけです。
言い方を変えれば、
【単に税金を計算する上での
経費(損金)にならない】
というだけなんです。
会計上は50万円であろうと、
30万円であろうと、
役員報酬というれっきとした『経費』
なんですね。
ちょっと言い回しが難しいですね(汗)。
■金融機関の評価としては、
『資金繰りが厳しく、
自らに対する役員報酬を減額してまで
利益を生み出そうとしている』
ということから、
【場合によっては高評価に繋がる】
ということも考えられます。
その結果、その高評価の延長線上で、
融資を受けることができるようになる
ことも想定されますので、
決算対策を考えるにあたっては、
『税務』のみならず、
【会計を含めてどう処理するのが
ベストかを思索する必要がある】
というわけです。
■このように、
『税務上』と『会計上』では
そのルールが違うものであり、
【あえて税務上のルールではなく、
会計でその実態に合わせて数字を作り、
合理的にその決算書を仕上げていく】
ということも極めて重要であると言えます。
企業の存続において大切なのは、
【節税のみならずこういった
資金面での対策、そして企業の実態に
即した数字を作ること】。
会社の本来の財務状況や経営成績を示す
貸借対照表や損益計算書が
税務申告のために歪められることも
なんだか変な話ですもんね・・・
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《本日の微粒子企業の心構え》
・決算を迎えるにあたっては、
節税対策のみならず、
【資金対策】
を考えるべきであると言える。
・資金対策を考えるにおいては、
『税務』のみならず
【会計上のルールも
トータルで総合勘案して
その方策を決定すべきであるもの】
と心得ておくべし。
・時に、税務申告を意識するばかりに、
本来の財務状況や経営成績が決算書に
適切に反映されていないことも。
こういった点も含めて、
トータルでどのように数字を作って
いくかということもまた、
深く考えたいものである。
今日も最後までお読みいただきまして、
ありがとうございました。