2022年1月10日経営を混乱させる【減価償却の在り方】について考えてみる
■「帳簿上の価値は1円しかありません。」
顧問のお客様とのご面談の中で、
よくこのようなお話になることがあります。
何のことかと言えば、
『減価償却』のお話なんですね。
『減価償却』とは、
(ざっくりとした説明にはなるのですが、)
【『10万円以上』のものであり、
1年以上の長期にわたって
使用されるものであった場合に、
これをすぐに経費にするのではなく、
『資産』として(経費にはせずに)計上し、
これを使用する期間に応じて
経費化(『減価償却費』と言います)
していく】
という考えなんですね。
■例えば、
車であれば
【普通車は耐用年数が6年、
軽自動車は4年】
ということが決まっている…
そして、この耐用年数を
経過してしまった後は、
これは場合にもよるのですが、
【帳簿上は価値が消えてしまう】
ということになるわけですね。
しかしながらこれを
『0円』にしてしまうと
帳簿にその物の存在が見えない
こととなってしまいますので、
【備忘価額として1円を計上する】
ということになっているわけです。
これを受けてのことが
冒頭に書いた言葉なんですね。
■しかしながら、
上述した
『普通自動車は6年、軽自動車は4年』
という耐用年数については、
【国税庁が定めているもの】。
https://www.keisan.nta.go.jp/r3yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensuhyo.html
ただ、現実に即して考えた場合、
同じ普通自動車や軽自動車であっても、
例えば、アトリエにこもる美術家
などのように
『普段はめったに使わない業種』
もあるかもしれませんし、
仮に営業などで車を使って
ガンガン動いていく状況であれば、
『その使用頻度も大きくなる』
というものでしょう。
■そんな中で、
杓子定規的に
国税庁の定めた耐用年数を適用して
減価償却を考えるとどうでしょう。
『減価償却』は上述したように、
【その使用する期間に応じて
合理的に経費を配分していく】
という考えですので、
その国税庁が指定する耐用年数より
長く使用する場合や
逆に短くしか使用できない場合は、
【会計の実態(価値の実態)を適切に
反映することができない】
ということなんですよね。
上述したように、
現役で大活躍している機械などを、
帳簿上の『1円』という価額で
表現されてしまうと、
経営者としては
「何とも腑に落ちない」
というものではないでしょうか。
■この、
国税庁が規定している
耐用年数については、
【その耐用年数通りに計上しないと、
原則として経費として認められない】
ということになってしまいます。
厳密に言えば、減価償却の計算を
国税庁より少なくすれば
経費になるものの、
国税庁より多くすれば
その超えた部分は経費にならないことに。
定められた耐用年数による
原則通りの減価償却は、
『税法上』の減価償却費として計上する
限度額であるため、
この耐用年数より短くして、
現実に即した減価償却をしよう
としたところ、
その『税法』の規定する
減価償却額を超過してしまうと、
その超過した部分については、
【会計上の損益計算書では減価償却費】
として反映されるものの、
【税法上(法人税法)においては、
減価償却を超えたた金額として、
その超えた金額が税金の計算上
『損金(経費)』として認められない】
ということになってしまうわけです。
■しかしながら、
【会計は経営を反映する鏡】
として考えた際に、
たとえこの税金が出てしまう方法による
減価償却であっても、場合によっては
【適切な経営の状況を表す減価償却費として
計上するという選択肢もある】
というところなんですね。
■実際のところ、
京セラの創業者である稲盛和夫さんも
こういった減価償却について
【有税償却をすることは
会社の経営の実態を反映することであり、
むしろそのようにしないと
経営の状況が見えない】
ということを指摘されています。
有税償却とは、耐用年数より短く償却する
ことにより、
税法の限度を超えた部分が経費として
認められずに税金がかかる
ということですね。
どうしても
「税金を支払いたくない」
という思いではありますが、
実際の経営の状況と
会計のギャップとしての一因としては、
上述した
【減価償却費に原因がある】
ということも念頭においておくべき
であるのかもしれません。
■こういった
【経営と会計のギャップ】
はいろいろな面で生じてくるというもの。
まずは、
【自分自身がどのようなことを
会計に表していきたいか】
そして、
【その会計にどの程度
経営の状況の実態を反映したいか】
ということを決めて、
その会計処理の方針を決定する
ということもまた重要なことである
と言えます。
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《本日の微粒子企業の心構え》
・『実際の会計』と『経営成績の実態』は
多少なりとも乖離してしまっているもの。
・その一因として
【減価償却費】が考えられる。
減価償却はどうしても
【国税庁の定めている
耐用年数によるものである】
というのが一般的なため、
【その耐用年数が
経営の実態と違っていれば、
当然その帳簿に反映される
物の価値も違ってきてしまう】
というもの。
・そういった場合に検討すべきが、
【実態に則した耐用年数を
会計上の耐用年数とする】
ということ。
そのことにより、場合によっては
【有税償却】となってしまうこともあるが、
【経営の実態を表すには
こういった選択肢も一つである】
ということを心得ておくべし。
今日も最後までお読みいただきまして、
ありがとうございました。