2022年7月9日個人事業主の節税~定率法での減価償却~
■7月に入り、
下半期がスタートすると、
個人事業主の方については
【今年度の税金】
のことを考えだすもの
ではないでしょうか。
実際に個人事業主の方から
税務相談が増え始めるのが
『10月から11月』
のこと。
そしてその後は、
『1月や2月の申告期限前に
相談が増える』
ということが多いように感じています。
■個人事業主の方で
相談に見えられるケースは、
【その年に売上高が
思いのほか上がっていて、
利益が出そうな状況】。
嬉しい悲鳴ではあります。
そんな中で、
【今年度の税金の負担が心配なので、
何かしら対策ができないか】
ということで相談にお見えになることが
少なくありません。
相談に見えるタイミングにもよるのですが、
私が提案させていただくこととして、
通常の節税策に加え、
【減価償却の方法を選定する
届出書を提出してはどうか】
ということがあります。
■個人事業主の場合、
【定額法】
という減価償却の方法が原則です。
『定額法』とは読んで字の如く、
【定められた一定額を毎年経費化していく】
というもの。
仮に300万円の車を1月に購入した場合、
普通車の耐用年数は『6年』ですので
『300万円÷6年』で
【1年あたり50万円の
減価償却費を計上する】
こととなります。
当然『一定額』
を経費化していくわけですので、
【6年目まで毎年変わらず
50万円を計上していく】
ということに。
■一方、
税務署に前もって
【減価償却方法を選定する届出書】
を提出することにより、
車などの一定の資産については
【定率法】
という償却方法を選択すること
ができるんですね。
こちらがその届出書。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/h28/18_19.pdf
『定率法』とは
【率が一定】
という意味。
これとの違いは、
『定額法』は
【額を均等に経費化していく】
のに比べ、
『定率法』については
【それぞれの年度末の評価額に
一定の率を乗じて計算していく】
という方法なんですね。
■具体的に言えば、
上述した300万円の車を
1月に購入した例で考えると、
耐用年数6年の場合の定率法の償却率は
【0.334】
となります。
具体的な計算方法としては、
1年目は『300万円×0.334』
という計算をし、
この結果
【100万円の減価償却費】
が計上できます。
■では、
2年目はどう計算するのかと言えば、
【1年目に減価償却をした(経費化した)
100万円を、取得した価額である
300万円から引いたものに対して
0.334を乗じる】
ということに。
つまり300万円から100万円を引いた
【200万円×0.334】
という計算ですね。
この計算をすると
【2年目は『66万円』の減価償却費を
計上することができる】
ということに。
■では、
3年目は300万円から、
1年目で計上した100万円の減価償却費、
そして2年目に計上した66万円の
減価償却費を差し引いた
『134万円』に0.334を乗じて、
その結果
【44万円】
という減価償却費になります。
■3年目まで見て分かるように、
1年目と2年目に関しては
定額法である場合の50万円を
上回る額ですので
【定率法の方が多めに経費を計上できる】
ということに。
しかしながら、
【3年目からは定額法を下回る
減価償却費となる】
ということなんですね。
このことから考えると、
【『定率法』で減価償却をした方が、
早期の段階で多めに経費を計上できる】
ということ。
したがって、個人事業で
利益が上がっている局面においては、
【『定率法』という方法で
減価償却をした方が税負担が少なくなる】
ということなんですね。
■上述したように、
個人事業主の原則的な減価償却の方法が
『定額法』であるため、
定率法で計算するには
【税務署に前もっての申請が必要】
となります。
逆に言えば、
前もっての申請をしていれば
この『定率法』での償却ができますので、
【初期の段階で大きく節税ができる】
ということなんですね。
ただ、『定額法』であっても
『定率法』であっても、
経費となるタイミングは違えども、
トータルで経費(減価償却費)となる金額は
変わりません。
そのように考えると、
【単なる課税の繰延
(税金支払いの先延ばし)】
ではあるのですが、
早期の段階で節税策を取ろうとするには
有効であるのではないか
というところ。
■今日は、
個人事業主の節税の方法として、
案外知られていない
【定率法の届出】
についてお話をしてまいりました。
どうしても利益が上がってくると
税金も高くなってしまうものですので、
もしご存じないようでしたら、
この
【定率法の届出】
も選択肢の一つとして持っておいて
良いかもしれませんね。
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《本日の微粒子企業の心構え》
・個人事業主の減価償却の方法は、
【定額法】
が原則である。
・これに比較し【定率法】は、
『定額法』に比べ
【初期の段階で多くの減価償却費を
作り出すことが可能】
となる。
・特に、税額が大きくなりがちな年において
この【定率法】を選択することにより、
場合によっては『大きな節税』
となり得るため、有用な選択肢として、
【定率法の届出】
を検討したいものである。
今日も最後までお読みいただきまして、
ありがとうございました。