2022年7月7日【お金がないのに利益が出ている!?】という原因について
■「あれ…そんなに利益が
出ているんですね。」
顧問のお客様とお話をする中で、
このようなお話が出てくることが
少なからずあります。
上述したことについては、
【自分が想定していた利益と
帳簿上の利益がかなり違っていた】
ということなんですよね。
■その感覚のズレは
一体どこから来るのでしょう。
往々にしてそれは、
【現金が増えた減った】
という感覚と、
【利益の状況が一致していないから】
というものです。
つまり、
【利益=増えた現金ではない】
ということなんですね。
このことは、かなり重要な
会計と実際の資金繰りの相違点
であると言えます。
■では、
どのような点でこのような
ズレが出るのでしょう。
要因はいろいろあるのですが、
そのうちの一つとして
【減価償却費】
が考えられます。
これは以前の記事でも
述べさせていただいているように、
<2020.6.11青色申告のメリット
~減価償却で大きく節税~>
https://muratax.com/2020/06/11/2819/
【原則として10万円を超える資産
についてはそれを全額経費とはせず、
ひとまず『資産』
(建物や機械、車両など)
として把握し、
これを使用する期間に応じて
国税庁が定めている耐用年数に応じて
だんだんと経費化していく】
というものなんですね。
<国税庁HP-耐用年数>
https://www.keisan.nta.go.jp/h29yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensuhyo.html
一括払いでこのような資産を
購入したとすると、
買った期はその購入の際に
現金が出ていくにもかかわらず、
経費として上がっていない
(資産になっている)ため、
お金はないのに利益が多い
ように見えることに。
また2期目以降は、
【実際の現金の支出がないのにも
かかわらず、
『減価償却費』という経費が
計上されている】
ということになりますので、
【現金は出て行っていないものの、
会計帳簿上は減価償却費の分だけ
利益が少ないことになっている】
という状況ですね。
■またその他には、
【売掛金】
が考えられます。
『売掛金』とは、
【帳簿上は『売上高』という
収益が上がっている(利益が上がっている)
ものの、実際には入金がされていないもの】
になりますので、
【現金はないが
利益は上がっている状況になる】
というもの。
■逆に、
仕入をした際に発生する
『買掛金』については、
【『仕入高』という経費は
上がっているものの、
そのお金の支払いはまだしていないため、
手元に現金は残っているが、
会計帳簿上の利益は少ない状況
(『仕入高』という経費が多い状況)】
ということになっているわけです。
このようなことが
【損益と実際の資金の増減とのズレ】
と考えられるわけですね。
■その他にも、
【倒産防止共済】
も支払いが考えられます。
『倒産防止共済』については、
基本的に
【保険料】
として経費化していくのですが、
そのような処理の場合は、
【実際の支払額と
経費となっている金額が
一致しているため、ズレはない】
ということに。
■しかしながら、
『金融機関の評価』
を考える上では、
その倒産防止共済の
掛金の支払いの際に、
【保険積立金】
などとして『資産』として計上をし、
【法人税の申告書上で経費化する】
という処理がなされることもあります。
むしろ、私のお客様に関しては
その方法を推奨しており、
実際にそういった処理をしているところ。
こうすると、
経費が減る上に、会社の資産が増えるため、
金融機関の評価としては
かなり良いんですね。
■そして、
この倒産防止共済については、
最大で『年間240万円』までの
掛金を支払うことができますので、
【その240万円分『資産』
として計上している分、
経費にはなっていない一方で
現金は少なくなっている】
という状況なんですね。
その倒産防止共済に加え、
上述した『売掛金』や『買掛金』、
そして『減価償却費』など…
いろいろな要素が加わることにより、
【実際の現金の増減と
損益の状況は大きく乖離している】
ということが少なからず考えられる
というわけです。
■冒頭の言葉にあるような、
【利益と資金繰りとのズレ】
についての疑問点は、
上述してきたことをお話しすると、
「あーそういう仕組みになっていたんだ…」
ということで納得され、疑問は解決する
というものです。
しかしながら、
【利益と実際の現金が違っている】
という事実は的確に把握し、
その経営を考える上で
注意すべきことである
と言えるでしょう。
特に、実際の利益と資金の状況が
乖離しがちな状況であれば、
【適宜そういった資金繰りについても
別途把握をしていくこと】
が必要となるかもしれませんね。
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《本日の微粒子企業の心構え》
・【帳簿上の損益と、実際の現金の増減は
一致しないことが通常である】
と言える。
・その原因としては、
【利益は上がっているものの
現金の入金がない『売掛金』】、
【利益は少なくなっているものの
実際の現金の支払いはなく、
手元に現金が残っている『買掛金』】、
同じく、
【実際の現金の支払いはないものの、
利益が少なくなっている『減価償却費』】
が要因として考えられる。
・上述したことに加え、『倒産防止共済』
を資産として計上している状況であれば、
なおのこと
【その損益と実際の現金の増減は
乖離しているもの】
と考えられる。
・大切なのは、
【損益と実際の現金の増減額は異なる】
ということを的確に把握し、
その経営の状況把握に役立てる
ことである。
今日も最後までお読みいただきまして、
ありがとうございました。