2025年6月29日役員賞与(事前確定届出給与)の設定方法を考える
■6月の終わりを迎え、
4月決算法人の申告期限が
明日までとなります。
弊所においては、かなり早い段階で
4月決算を終えていたため、
4月決算法人に関しては、割とスムーズ
に業務を終えることができたかな
という感覚です。
■そして、その決算が終わった後は、
翌期の役員報酬を検討する必要がある
というところ。
この役員報酬の検討については、
翌期の損益をお客様とご一緒に
試算をして、
その利益に基づいて、自社にとって
適正な役員報酬の設定を試みます。
■この役員報酬の設定の際は、
役員報酬のほか、役員賞与
(事前確定届出給与)を含めて
検討する流れとなります。
この役員賞与を設定する理由としては、
主に2つです。
■一つは、純粋に法人の利益がいくらで
着地するかがわからないため、
もし利益が上振れした際に、
賞与を支給することができるように
しておくためのもの。
そしてもう一つは、
【社会保険料削減のため】
に設定するというところなんですね。
今日はこの後者の社会保険料削減に
ついての賞与について、
見ていきたいと思います。
■仮にですが、役員報酬の年間トータル
で800万円を支給したいとしましょう。
そこで事例を2つ出して、
社会保険料の試算をしてみます。
社保は法人+個人のトータルの額です。
参考までに、福岡県の協会けんぽの
表もこちらに共有しておきます。
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<役員報酬800万円を支給する際の比較>
《パターン①》
・役員報酬:月30万円(年360万円)
・役員賞与:年440万円
・役員報酬に対する社保:108万円
・役員賞与に対する社保:80万円
・合計社保料:188万円
《パターン②》
・役員報酬:月5万円(年60万円)
・役員賞与:年740万円
・役員報酬に対する社保:27万円
・役員賞与に対する社保:96万円
・合計社保料:123万円
《比較結果》
②により、「65万円」の社会保険料削減
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■このように、役員賞与を用いて
社会保険料を減額させる際は、
月の役員報酬を減額して、
役員賞与を差額に設定するということで、
この社会保険料の削減が可能と
なるわけですね。
■ただ、ここに大きなリスクがあることは、
想定しておかなければなりません。
役員賞与は「事前確定届出給与」
とも言われるように、
税務署に前もって、いつ支払うかという
ことを申請しておかなければなりません。
■基本的にその法人の決算月の、
なるべく遅い日にこの役員賞与の設定を
するわけですが、
もし利益の状況が良くなく、
役員賞与を支払えなくなった場合、
仮に上述した740万円の賞与を設定して
いたとして、
少し減額した500万円の賞与を払うなどは
できないということに。
■仮に500万円の賞与を払うと、
法人の経費とならない上、
その役員の給与所得として課税されて
しまいますので、
法人と個人において大きな負担
を強いられるということに
なるわけですね。
■したがって、役員賞与の申請をした際は、
ゼロヒャクで賞与の支給を考える
ということになるわけです。
この点には十分な注意が必要ですね。
■そのようなことから考えると、
このリスクを回避する考え方として、
たとえ賞与を支給できなくても、
月30万円で役員報酬を設定していれば、
・月30万と5万の差額の月25万円
(年300万円)は経費になる
・法定福利費(法人の社保):約40万円
→合計経費:約340万円
→ 法人税等:約85万円の削減効果
(税率25%で試算)
ということになるんですね。
■このように、役員賞与により社会保険料
を削減するスキームに関しては、
ゼロか100かで考えないといけないため、
場合によっては多くの税負担を強いられる
ことにもなりかねない上、
個人にお金を移すことができないことにも
つながるため、
こういった点には十分注意が必要です。
■したがって、役員賞与の試算の際には
このようなことを念頭に置き、
自社にとって最も有用な設定を
心がけるようにしましょう。
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《本日の微粒子企業の心構え》
・役員賞与を決定する際は、
法人の利益の見通しが立たない場合
のほか、
社会保険料を大きく削減するために
検討することが多いもの。
・役員賞与は「事前確定届出給与」とも
言われるように、
前もっての税務署への申請が
必要であり、
その支給についてはゼロヒャク
であることを念頭に置いておくべし。
・役員報酬設定の際はそのようなことに
十分に注意し、自社にとって適切な
報酬設定を心がけたいものである。
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今日も最後までお読みいただき、
ありがとうございました。