2025年8月2日「還付が有利か」は【キャッシュ増加】の判断で!
今日は土曜日ではありますが、朝から全力投球で仕事に打ち込んでいます。
かなり業務が立て込んできてしまっているので、気を抜かずに週末も頑張っていきたいところです。
さて、本日の本題です。
「還付」の甘い響きに要注意?
税理士として仕事をしていると、当然のことながら節税というお話が出てくるわけですが、
その中でも「還付」という用語には何とも甘い香りのする魔法的なイメージが強いのは私だけでしょうか。
還付というと、払ったものが戻ってくるというもので、
何とも得をした気分になるものなのですが、
今日はその還付についてもう少し入り込んだ話をしていきたいと思います。
予定納税による還付は「前払いが戻るだけ」
還付の代表的なものは、予定納税・中間納税で前払いしていたものが、
年間の結果の税額が少なかったことにより還付になるケースです。
こういった場合は、税金の前払い分が返ってくるということにすぎませんので、
トータルすると変わらないということになりますよね。
不動産投資による消費税還付のからくりと注意点
また、不動産投資による消費税の還付ということも考えられるかもしれません。
これは不動産のうち建物部分を購入した際、
その購入した金額に対する消費税が原則課税により消費税を計算する場合、
支払った消費税として認識されるため、
その支払った消費税が多ければ、売上で預かった消費税を超えることになり、
その結果、還付となるということになるわけですね。
ただし、この不動産の購入に関しては、
原則として住宅の貸付用に購入した不動産で、
その額が1,000万円以上の支払い対価となっているものは、
消費税を差し引くことができませんので要注意です。
ちょっと具合が悪くなるかもしれませんが、
国税庁のHPを共有させていただきます。
そのような注意点はあるのですが、
確かに不動産を購入した際は消費税が還付されるというところなんですね。
しかしながら、この不動産に関しては、これを売却した際に、
その建物部分の売却による消費税を、売却の際に納付することになります。
そういった点から考えると、長期的に見て、還付もあり納付も出るということから、
その効果が相殺されて、結果としてプラスマイナスゼロになるというのが原則的な考え方です。
なお、これは減価償却についても考え方は同じになります。
<2022年1月10日経営を混乱させる【減価償却の在り方】について考えてみる>
https://muratax.com/2022/01/10/4793/
輸出取引による「0%課税」と還付の仕組み
そして還付の代表的なもう一つが、輸出した場合の還付です。
輸出の仕組みとしては、国内で仕入れた商品を海外に売るという行為なのですが、
この海外に売るという際は、輸出免税という取り扱いにより、
消費税が0%と考えられるんですね。
消費税法の考え方としては、課税売上げとして認識するものの、
その消費税率が0%という、少し複雑な仕組みになっています。
ただ大切なのは、「売上で預かる消費税がない」という事実です。
そうなると、仕入れの際に支払った消費税が払ったままになってしまうこと、
そして、その売上げで預かった消費税がないことから、
その支払った消費税分が還付されるということになります。
還付の罠:「キャッシュが残るか」がすべて
こういった還付に関しては、この還付された消費税が取り戻される機会というのは基本的にありませんので、
一定の有効性がある節税手段といえるかもしれませんね。
ただ、ここからが今日の大切なポイントです。
上述した不動産投資にせよ、輸出取引にせよ、
【実際のところキャッシュが増えているかどうか】
ということが、最終的な着眼点ではないかというところ。
というのも、還付があったにせよ、結局その事業により損失などが出て、
キャッシュが失われている状況であれば、
その還付の効果は消されてしまうということになるわけです。
前者の不動産投資で言えば、減価償却費を加味した上で適切な利回りが出ていて、
不動産取引単体でキャッシュが増えているということであれば、
それは消費税の還付や減価償却というよりも、不動産投資そのもののメリットということになるでしょう。
また、後者の輸出取引に関しては、商売の基本として、
売上から仕入れを引いた利益が出ていれば(在庫の話は割愛します)キャッシュは増えるはずですが、
実際には、海外の資金決済会社にプールされた売上の資金が、
マネーロンダリングの疑いでロックされるなどして、
現金が引き出せないといった事例も存在します。
(一つや二つではなく、結構聞く話です…)
こうなると、せっかく輸出という事業をしていても、
肝心のキャッシュが手元に入ってこないということになり、まさに本末転倒です。
消費税の還付があったとしても、
本業でのキャッシュが得られず、その損失の方が上回るということは、
実のところ良くある話です。
そのようなことから、還付という言葉に惑わされず、
その事業単体で利益が出ているのかをしっかり見極めた上で、
自社にとって最も適切な節税方法と、事業の在り方を選び取りたいものです。
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《本日の微粒子企業の心構え》
・還付という言葉に惑わされず、冷静にその実態を見極めるべし。
・還付の裏に潜む出口での納税や、本来的な事業単体での利益に注目したいところ。
・大切なのは節税ではなく、最終的に手元に残る現金であるため、そこに意識を向けて、
正しい経営判断を心がけたいものである。
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今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。