2021年10月11日【減価償却費】の個人と法人の違いとは
■先日は、
預金利息について
個人と法人の取り扱いの違い
について見てきました。
今日はそれに続くお話として
【個人と法人の『減価償却費』の違い】
について見ていくことにいたします。
■まず『減価償却費』について。
ざっくりと説明をすると、
会計の世界では10万円以上の物は
『高価な物』と考え、
「この高価な物は、買った年だけじゃなく
翌年以降も使うよね」
ということで、
【その使用の段階に応じて
少しずつ経費にしていく】
という考えになります。
ちなみに、
減価償却費はあくまでも
『物』に対するもので、
サービスは無関係となります(^^)。
20万円の研修費を支払ったとしても、
これは『物』ではないから無関係
ということですね。
この減価償却費については、
個人と法人で取り扱いが違うため
今日はそのことについて
見ていくことにします。
■まず個人事業主については、
【減価償却費は
必ず計上しないといけないもの】
となります。
【してもしなくても良いのではなく、
必ず計上しなければならない】
ということですね。
これに対し法人は、
この減価償却費が
【任意計上】
…つまり
【してもしなくてもいいよ】
という取り扱いとなります。
そして、
【その年に減価償却をしなかった金額は、
翌年以降において
その経費化をすることができる】
ということになりますので、
仮に減価償却をしなかった年が
あったとしても、
【トータルすると
減価償却費となる額は変わらない】
ということになるわけですね。
■ほぼ基本的に
減価償却費は『経費』ですので、
経費を多く計上すればするほど
利益が少なくなり納税も少なくなるので、
「それだったら
減価償却費を計上したほうがいいよね」
ということになるわけですが、
金融機関の評価においてはどうでしょう。
往々にして考えられるのが、
金融機関に融資を申し込む際は、
【できるだけ利益を多く出し
納税をしっかりとしている状態】
が高評価に繋がりますので、
【減価償却費を少なくして利益を出す】
といった手法も考えられる
というわけですね。
法人についてはこのような
『減価償却費の調整』が認められている
というわけです。
■しかしながら、
実際の融資の評価においては、
『減価償却費を調整している』
ということは
あまり好ましいものではない
ということも見聞きします。
では、この減価償却費を
少なく計上しているということが
どのようにして分かるのでしょうか。
これは、決算書に添付する
『固定資産の減価償却資産一覧表』や、
『法人税の別表十六』という表により、
本来の減価償却費の金額より
少なく計上しているかどうか
という判断がつくんですね。
ちなみに、これが法人税の別表十六。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2021/pdf/16(02).pdf
何やらややこしそうですが、
これを一目見ると、
減価償却費を調整しているかどうか
が分かります(^^)。
■結局のところ、
損益計算書において
利益が上がっているものの、
これは減価償却費を
調整した結果であったとしたならば、
金融機関にとってはやはり
それは本来の数字ではなく、
【減価償却費を調整したものに過ぎない】
という判断になってしまう
ということですね。
とは言え、
これもケースバイケースですので、
「必ずしも良くない評価になる」
とも言えないわけで、
状況に応じて適切に
こういった対策をすることも有用である
とも言えます。
■というわけで今日は、
『減価償却についての
個人と法人の取り扱いの違い』
について見てきました。
『減価償却』については
「その概念がどういったものか」
ということがなかなか
ピンと来にくいものなのですが、
上述したように
【高価なものについて
買った年に全てを経費にするのではなく、
だんだんと時の経過とその使用による
その物の価値の減少とともに
経費を増やしていく】
という考えがベースとなります。
こういった前提知識をしっかりと持って、
減価償却費を適切に取り扱うように
しましょう(^^)。
…とは言え、難しいですよね(^^;。
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《本日の微粒子企業の心構え》
・個人事業主と法人とでは
【減価償却費の取り扱いが違うもの】
と心得ておくべし。
・個人事業主の減価償却費は
【強制計上】であり、
法人の減価償却費は
【任意計上】となる。
・個人事業主で
『減価償却費を調整している』
ケースが見受けられるが、
これは誤りであり、
【個人事業主は
減価償却費を必ず計上する】
ということを念頭においておくべし。
・法人については、
その減価償却費を場合によって
上手に調整することにより、
金融機関の評価もトータルで考え、
適切な税務や融資の対策を検討したい
ものである。
今日も最後までお読みいただきまして、
ありがとうございました。