2021年10月19日給料設定の際に社会保険料を加味していますか?
■私が税務相談に乗らせていただく中で、 よく 「売上を伸ばしたい」 だとか、 「利益を伸ばしたい」 といった類のことを相談されるケースが 少なからずあるわけですが、 その際に私自身が チェックする項目として、 (毎回ではありませんが) 【人件費】 についてのものを見ることがあります。 結局のところ、 売上を伸ばそうが、 利益の拡大を目指そうが、 究極の目的は 【手元により多くのキャッシュを残すこと】 であるため、 【経費の削減】 を考えるべきではないかと 思っている次第なのです。 経営として往々にして、 『無駄な支出』をしている状況が 考えられるわけですので、 そういった『経費の削減』といった面から 人件費の項目を見るようにしている というところ。 今日はそんなことから お話を続けていくことにいたします。 ■『経費の削減として人件費を見る』 といっても、 『人件費を多く払っているかどうか』 ということを見るわけではなく… 【100円単位で人件費が(給料が) 設定されているか】 ということをチェックしてるんですね。 具体的に言えば、 これは損益計算書の『給料』 の項目を見ても分かるものではなく、 場合によってですが、従業員さんの 『賃金台帳』を見せていいただき、 【その毎月の給料が 100円単位になっているか】 ということをその賃金台帳を 見ることが許可された際には 見てみることにしています。 ■もし100円単位になっていたとしたら、 その次に確認するのが、 【社会保険料の標準報酬月額表】 なんですね。 これは福岡県の 社会保険の料率表なのですが、 ここには健康保険と厚生年金の 給料別の料額が載っています。 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r3/ippan/r30240fukuoka.pdf これを見ると分かるかと思うのですが、 例えば一番左が『19 (16)』 となっている等級を見ると、 これは給料にすると 【240,000円の区分】 だということが分かります。 この240,000円の行に それぞれ会社と従業員が負担していく 健康保険(介護保険も含む)と厚生年金が 記載されている というわけで、 これを従業員負担分として 毎月の給料から 天引きしていくとともに、 【この金額が企業としての負担にもなる】 ということなんですね。 ■そこで仮に、 『月額250,000円』の給料を設定した としましょう。 そうなるとこの等級表では 【260,000円の月額の 標準報酬になっている】 ということが分かります。 こうなると 一つ等級が上がっていますよね。 もし仮にこの方が 介護保険の対象者であるとしたら、 この等級が一つ違うだけで 毎月の健康保険と厚生年金の料額が 従業員負担と企業負担のそれぞれで 約3,000円ほど変わってくることが 計算してみると分かります。 毎月3,000円ですので 年間にすると36,000円位。 【この36,000円が会社の負担分と 従業員の負担分それぞれで変わってくる】 ということになるわけです。 これが10人となると、36万円。 かなり大きな額ですね… ■もちろん、 年金に関しては その支払った金額が多いほど 将来もらえる年金が増える可能性は あるのですが、 【こういった不安定なご時世において、 それをどう捉えるか】 ということも考えられます。 さて、話を戻すと、 この表を見ていただくと分かるように、 250,000円であれば上述したように 【260,000円の区分】 なのですが、 仮に249,999円であれば、 【240,000円の区分】 となるわけです。 そうなると、 【給料は1円しか変わらないのに、 社会保険料の負担は 毎月3,000円も変わってくる】 …つまり 【社会保険料が減った分 従業員さんにとっては 手取りが増えるわけですし、 企業にとっては 毎月の社会保険料が少なくなる】 ということになるわけです。
■これは、 1円だけ給料を少なくするという 極端なケースではありますが、 このような結果が見えるわけですので、 細かく給料が設定されているとすれば、 それは社会保険料が考慮された結果の 給料の設定である可能性が高いので、 私としてはまずこの 『人件費の毎月の金額』をチェックし、 こういった 【社会保険の標準報酬月額を 念頭において給料設定をしているか】 ということをお尋ねしたり するものなのです。 ■こういった 『細切れの単位で 給料を設定するのはいかがなものか』 というケースも考えられますが、 そういったケースであれば、 【毎月の給料で少なくした部分を 『賞与』として上乗せ支給すること】 も選択肢の一つかもしれません。 『賞与』であれば基本的に その支払った金額によって 社会保険料の料率がかかってくるため、 賞与に関しては 『社会保険料の削減』 という効果はないのですが (とは言え、大きな金額となると、 場合によっては削減になったりもします。) 【人件費トータルで見ると、 社会保険料を少なくすることができる】 というもの。 ■というわけで今日は、 「経費の削減を考えた際に、 毎月の給料を適切に 社会保険料の観点から設定していますか」 ということで 記事を書かせていただきました。 ちょっとしたことかもしれませんが、 こういった少しの金額の積み重ねが、 後に大きなものとなってきますので、 しっかりとこういったものほど 緻密に考えていきたいものです。 もちろん、場合によっては 【従業員さんの承諾を得る】 ということも大切ですので、 その辺は人間関係を第一に考えて いくようにしましょう(^^)。 ------------------ 《本日の微粒子企業の心構え》 ・給料の設定の際には、 【社会保険料の料額表】 をもとに、 その支払う金額を慎重に 設定したいものである。 ・場合によっては、 【毎月の少なくした給料分として、 その賞与の支給の際に その額を上乗せすることにより、 トータルのバランスを取る】 ということも大切かもしれない。 ・経営において 【経費の削減】 は命題と言える。 小さなものほど見逃しがちなため、 こういった点に注視してしっかりと その経費削減を根を詰めて 考えたいものである。 今日も最後までお読みいただきまして、 ありがとうございました。