2022年5月31日個人事業と法人を並行する場合の注意点
5月も今日で終了。
早いもので、明日からは上半期の最終月
ですね。
また気持ち新たに頑張ってまいりましょう!
さて、本題です。
----------------------
■法人の役員として
経営をしている場合において、
場合によっては
【個人事業主から
法人成りをしたタイミングで、
個人事業の一部を法人に移している】
ということが往々にしてあります。
そのような際、
その後新たな事業をする際に、
【個人事業で行うのか、
それとも法人で行うのか】
ということについて頭を悩ませる
ということも少なからず
あろうかと思います。
そこで今回は、
『個人事業で事業を営む場合』と
『法人で事業を営む場合』
について双方の比較をする形で
お話を進めていくことにします。
■このようなお話のよくある例としては、
『不動産業』ではないでしょうか。
とある物件を購入し、
または土地を購入し、
その上に上物(建物)を建てて
他の人に賃貸をする
といった形態。
このような場合、まずは
【土地や建物の購入】
から入るわけで、
その後その物件を借りようとする人との
契約が決まり、
その後の流れがスムーズに進めば、
最終的に賃貸借契約となり、
その後に賃貸料収入を得ることができる
という仕組みが、ざっくりしたところの
【不動産収入】
であると言えるでしょう。
■まずは、
『物件の購入』のところから
見ていくのですが、
個人事業主で
規模がそこまでない状態で
物件を購入するのと、
法人でそれなりの規模感を持って
経営している状況において
物件を買う場合とで比較すると、
個人事業において
『免税事業者』である場合、
【特に物件の購入について
消費税については考慮する必要がない】
ことになりますよね。
一方法人で、前々期の課税売上高が
1千万円超える事業者であれば
当期は『課税事業者』となりますので、
『原則課税』により計算している
状況下であれば、
【その建物の購入部分について、
消費税の控除を受けることが可能】
となります。
■また、
消費税については
『土地の購入』については
非課税取引で消費税は考えず、
『上物』についてだけ
消費税が関わってきますので、
【この上物に係る消費税分だけ
法人であれば税務署に払う消費税を
少なくすることができる】
という状況。
その他にも消費税については
併せて注意すべき点もあるのですが、
ここでは割愛させていただきます。
■そして次は、
実際に賃貸料収入が入るフェーズ
について見ていくことにします。
個人事業であれば『不動産所得』となり、
その所得を得た後に
確定申告をする必要が出てきます。
個人に関して言えば、所得税は
【超過累進税率】
という仕組みがとられており、
【所得が高ければ高いほど
不動産所得に係る所得税も高くなる】
ということに。
<国税庁HP-所得税の税率>
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
したがって、法人の役員をしていて、
多額の役員報酬をもらっている状況で、
この不動産所得が上乗せされてくる
となると、
【大きな所得税率がかかってくる】
ということが考えられるわけですね。
■一方『法人』はどうでしょう。
法人については、
ざっくりとお話しすると、
年800万円を超えるあたりの所得から、
法人税の税率は高くなるのですが、
(全体的にはもっと細かい区分が
されています)
【年800万円以下であれば、
概ね30%弱の税金がかかってくる】
と考えれば良いことに。
個人の場合においては、
上述した『所得税』のほか、
『住民税』や『事業税』
も場合によってはかかってくる
ことになりますので、
【その税負担は大きくなりがち】
と考えられます。
一方法人は、往々にして
『30%』ほどですので
【その納税計画もしやすい】
という感覚。
■また『購入』の際、
建物については、
【減価償却】
の考えで次第に経費化していくこと
になりますので、
購入する物件にもよるのですが、
【耐用年数に応じて上物部分を
減価償却(経費化)していく】
ことになります。
当初は、
【賃貸借契約自体が成立しない】
ということも考えられますので、
この減価償却費の分、
経費が先行する結果となり、
【不動産所得単体で見ると
赤字が計上されること】
が予想されます。
そのような状況下において、
法人で利益が上がっている状況であれば
【この赤字をメインの事業に
ぶつけることにより、
そのメインの事業の所得を圧縮する】
ということが可能となります。
■一方個人はと言えば、
自らの法人から得ている
役員報酬の所得(給与所得)に、
上述した不動産所得の赤字を
ぶつけることにより、
その役員報酬の給与所得を
圧縮することができ、
【結果として所得税と住民税が安くなる
(所得税は確定申告により
還付を受けることができる)】
ということに。
その減税となる効果も、
所得が高ければ高いほど
個人の方が有利になりますし、
個人において所得が低い状態であれば、
法人の方で経費を作っていって
法人の税金を減らす方が得になる
ケースもある
というものです。
■もう一点、
『法人』の方で
不動産の収入を得たとすると、
法人から個人にその分のお金を移そう
とする際、
【基本的に役員報酬を上乗せして
回収していく】
という方法しかないことになります。
(あくまでも基本的に‥ということは
申し添えておきます。)
一方『個人』はと言えば、
ダイレクトに個人口座に
不動産収入が入ってきますので、
【特に現金を移転するということは不要】
となります。
■上述してきたように、
【不動産所得を個人で得るのか、
法人で得るのか】
ということにより、
その税金の考えも様変わりすることに。
こういった点をしっかりと把握して、
不動産だけではなく、
【その他の事業を個人にするのか
法人にするのか】
ということを慎重に検討したいものです。
------------------
《本日の微粒子企業の心構え》
・個人事業と法人を並行している場合、
【新規の事業を個人事業で行うのか
法人で行うのかにより、
その税負担が変わってくるもの】
と心得ておくべし。
・上述した税負担は、
【個人や法人で
それぞれどの程度の所得を得ているか】
また、
【そのことにより、
どのくらいの税率になっているか】
ということも併せて検討する必要がある
ものと心得ておくべし。
・新事業を行う際、このように
【個人で行うのか、法人で行うのか】
という選択肢を持つことは
極めて重要であると言える。
上手に選択することにより、
場合によっては
【大きな税負担の軽減】
も予想されるため、その選択には
十分注意して実行に移すべきである
と言える。
今日も最後までお読みいただきまして、
ありがとうございました。