2022年7月22日よくある【家賃前払いによる節税】について私が思うこと
■節税対策において、
【何とか税金を減らしたい】
ということで、
【短期の前払費用】
という方策を検討することが
あろうかと思います。
『短期の前払費用』とは、
【当期中に翌期を含む
1年以内に継続してサービスの提供を
受けるものの支払いをして
それを毎期継続して
前払いをしていくことにより、
その1年間以内分の前払いを
当期の経費にできる】
というものなんですね。
【どうせ翌期に払うものだから
当期に前払いをして経費にしてしまおう】
というのがこの『短期の前払費用』
ということになります。
<国税庁HP-短期前払費用>
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5380.htm
■しかしながら、
現実問題として
【手元からキャッシュが消えている】
という事実には着目した方が
良さそうです。
仮に、1ヶ月10万円の事務所家賃を
年払いすることにより
120万円の家賃を前払いしたとしましょう。
ざっくりとした説明なのですが
【120万円に対して
30%の税負担が減るとすると
36万円の納税が減る】
ということに。
しかしながらその反面、
【120万から36万円を引いた『84万円』
についてはキャッシュアウトしている】
ということなんですね。
手元から現金が消えているわけです。
■では、
何もしなければどうなるかというと、
120万円を支払うことにより
減るだったはずの36万円が
そのまま税金として出ていくこと
になりますが、
【手元から出る資金はこの36万円のみ】
ということになりますね。
また、この前払いをした家賃は、
『当期の経費』にしていますので、
【翌期の経費とはなり得ないもの】
になります。
したがって、翌期以降は、
さらにその『翌々期』の家賃を
前払いしていきますので
【翌期以降の税負担は変わらない】
ということに。
当期だけは、通常の月払いの家賃に加え、
前払い分が加わるため、
多くの経費が計上できる
というわけですね。
ただ、何度も言いますが、
当然その分手元の現金は消えてしまいます。
■なお、
『短期の前払費用』については、
等質等量のサービスに限定されます。
『保険料』などもその良い例なのですが、
こういった支出をする際に、
一括で現金が出て行ってしまう上、
【毎期継続して…
おおむね3年から5年以内は
継続しないことには、
税務調査で指摘されてしまう】
ということにもなりかねません。
そして、上述した
『事務所家賃』に関して言えば、
【翌年分を前払いする】
という契約を大家さんと取り交わす
必要があり、
【当期は順調で資金繰りが良いものの、
翌期以降は経営が悪化して
資金繰りが厳しくなる】
ということも否定できない状況。
(大家さんはウハウハですが・・)
■そんな中、
単なる『税金支払いの先延ばし』
にし過ぎない、この
【短期の前払費用による
家賃の前払いはちょっと怖いかな】
というところなんですね。
そもそも、
トータルの税負担は変わらない上、
【本来経営のために使える資金を
この前払いのためにロックされてしまう】
ということが、
『経営の血液』とも言える
現金の流れを悪くすることに繋がり、
これは大きな経営のリスクと
なり得ることも
想定しておかなければなりません。
■どうしても、
『税金は嫌なもの』
という公式が(意識・無意識問わず)
成り立ちがちですが、
最も怖いのは、
【手元の現金が消えること】
ではないでしょうか。
『税金が嫌』という思考になった瞬間に、
【そもそも、手元の現金は
どう動いていくのだろう】
ということを念頭に置き、
冷静に考察をして、
的確にその経営と納税の思索をしたい
ものです。
------------------
《本日の微粒子企業の心構え》
・俗に言う『短期の前払費用』については、
【当期の税負担は大きく少なくなるものの、
翌期以降は変わらない】
ということになるもの。
・何より注意すべきは、
【手元から現金が消える】
ということ。
手元から現金が消えれば、
【経営にとっての
軍資金がなくなってしまうこと】
になるので要注意であると言える。
・中でも『家賃の前払い』については、
大家さんとの契約書自体を変更して
取り交わす必要があるため、
翌期以降で資金繰りが厳しくなった際も
その制約を受けることになり、
【経営にとっては
ハイリスクになる恐れがある】
ということを心得ておくべし。
今日も最後までお読みいただきまして、
ありがとうございました。