2022年9月7日【得意先の経費立替】がある際に注意したいこと
■以前の記事の中で、
『経営者としてなるべく事務作業などに
自らが動く機会を作らず、
自社のスタッフや外注に
その業務を任せていくことが重要である』
というお話しさせていただきました。
<2021.9.19仕事を外注先に任せる方法を
考えてみる>
https://everydayrunchange.hatenablog.com/entry/2021/09/19/055437
今日はそのことについて、『税務面』
でのお話をしていきたいと思います。
■仮にですが、
『ホームページの制作を当社が請け負う』
としましょう。
そのホームページの制作とセットで、
SEO対策などにおける
【広告費の負担】
をするようなケースもあるのではないか
と思います。
本来的には依頼した方が負担すべき
広告料ではあるのですが、
『その都度広告費の計算をし、
先方に直接広告費を払ってもらう』
ということが事務処理的に
煩雑な部分もありますので、
【ホームページの作り手側が
その広告費の立替をする】
という状況ですね。
当然『広告費』ですので、
場合によっては
【10万から100万単位のお金が動く】
ということも考えられます。
では、その時にどのような処理を
するのか考えてみましょう。
■仮に、
300万円のホームページ制作料(売上高)
とし、広告料が200万円あったとすると
どうでしょう。
「どうでしょう」というのは、
【会計処理をどのようにするでしょうか】
ということですね。
これは二通りの処理が考えられます。
まず第一に
【300万円と200万円トータル500万円を
売上高として計上する】
という方法。
そして、自社で支出した
依頼を受けたものの広告費を
【広告宣伝費】
(場合によっては、
自社にとっての広告ではないため
『支払手数料』などとすることも
考えられます)
として処理をするということ。
そうすると結果の損益としては
【500万円から200万円の
広告費を差し引いた
300万円が利益として残る】
ということになるわけですね。
そのことにより、
【広告費を除いた純粋な売上高が
そのまま利益となっていること】
が分かるかと思います。
■そしてもう一つは、
広告費200万円については
当社の損益とは関係ないため
【立替金として処理をする】
という方法ですね。
まず広告を打った段階で
200万円を『立替金』として処理をし、
先方に請求する売上高としては
『300万円』とする。
そしてこの300万円に加え
【立替精算分】
として200万円を上乗せして
合計500万円の入金をしてもらう
ということ。
こうなると、
本来の姿に近い状況となり、
【純粋な売上である300万円が
そのまま売上高に計上され、
これによる利益もやはり300万円となる】
というもの。
【結果としての利益は両者とも同じ】
ということですよね。
■しかしながら、
ここで注意が必要なのが、
【簡易課税制度により
消費税を計算している場合】
について。
『簡易課税制度』とは、
【売上で預かった消費税だけ
をもとに消費税を計算する方法】
です。
<2021.6.1消費税の積立方法について>
https://note.com/muratax/n/naca5f7ad9208
こうなると支払った消費税は
関係しないため、
【売上高が増えた分
消費税の負担が増える】
ということになるわけです。
そのような状況下において
上述した二つの方法を
考えてみましょう。
■まず、
最初に述べた方法については、
『純粋な売上高300万円に加え
広告費が200万円乗った売上高』
となっていますので、
【この広告費が乗った
200万円分の売上高の分、
消費税が増えてしまう】
ということが分かるかと思います。
その一方で、
二つ目の方法として書いた
『立替金』として処理をする
方法においては、
売上高は純粋な
300万円に留まりますので、
【この300万円に見合った
消費税がかかってくる】
ということが分かりますよね。
■結論として、
【立替分の経費を
売上高と経費の両建にするのか】
それとも、
【純粋な売上高のみとし、
立替経費分は立替金として
処理をするのか】
によって、
【消費税において
簡易課税を採っている場合に
上述してきたような差が出る】
ということ。
これはしっかりと
押さえておきたい内容です。
■また場合によっては、
売上高が増えることにより、
前々期の課税売上高が
1千万円を超えたり
5千万円を超えることによって、
【消費税の納税義務者】
となったり、
【簡易課税制度が
使えなくなったりする】
という可能性も考えられます。
そのようなことから考えると、
原則としては
【立替金】
として処理をした方が良さそうです。
■ただ、
税務調査の際は、
【明確にこの立替部分の金額が
把握できる】
ような状態でないと、
調査において疑いの目を
向けられてしまいがちなもの。
立替金が出る場合においては、
【その売上高と立替金を
分類した会計処理】
をするとともに、
【その立替の金額を通帳や
請求書において明記しておくこと】
を考えたいものです。
会計処理によっては、こういった
【目に見えないような部分】
において、その税負担が
増えていくことがありますので、
重々注意するようにしましょう。
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《本日の微粒子企業の心構え》
・売上高が計上される場面において、
場合によっては
【経費の立替が出る】
ということが少なからず見受けられる。
・その際に、
【売上高を立替分を加えた合計額
で計上し、その立替分を
自社の経費として処理するのか】
または、
【純粋な売上高だけを売上高として、
その売上高をそのまま利益とするのか】
の二つの会計処理方法が考えられる。
・消費税の計算方法において
『簡易課税制度』を選択している
場合においては、
【売上高が増えれば増えるほど
消費税の納税が増える】
ということを心得ておくべし。
そのように考えると、
【原則は『立替金』として
別建の経理をすること】
が有用であると言える。
・そして、立替処理をする際に、
【その立替部分を明記した状態】
でないと税務調査において
否認される可能性もあるため、
併せて注意が必要であるもの
と心得ておくべし。
今日も最後までお読みいただきまして、
ありがとうございました。